京都古寺【東福寺】
東福寺についてAbout Tofukuji
東福寺は塔頭(たっちゅう:別院)が多く、京都有数の境内面積を誇る大きなお寺です。
まずは東福寺の歴史について簡単に見ていきますね
臨済宗東福寺派大本山。山号は「慧日山(えにちさん)」。
嘉禎2年(1236年)、時の摂政関白・九條(藤原)道家が藤原氏の氏寺であった法性寺の境内に、仏殿の建立を発願したのが始まり。円爾(えんに)を開山(初代住持)として迎え、仏殿は建長7年(1255年)に完成しました。以後も諸堂が造営され、文永10年(1273年)に東福寺の完成をみます。
※九條道家は東福寺の完成を見ることなく亡くなっています
その後、鎌倉時代末期の2回の火災により伽藍の大部分が焼失してしまいますが、その都度復興がなされました。しかし、明治維新後は明治政府に寺域が没収され、約70あった塔頭は26まで減りました(現在は25)。
明治14年(1881年)には失火により仏殿や法堂などが焼失しましたが、昭和9年(1934年)に本堂(仏殿兼法堂)が建立され、現在に至ります。
東福寺の見どころ5選Highlights
東福寺の見どころを5つ厳選してご紹介いたします。
ぜひここに注目しながら拝観してみてください
ファインダー泣かせの通天橋
東福寺と言ったらやはり「通天橋(つうてんきょう)」ですね!昔は下駄を履いて通行していたので音が大きく鳴り、地元では「ドンドン橋」とも呼ばれていたそうです。
橋の上から360度見渡せますし、どの方向も様になるので、どこにカメラを向けて撮ったら良いか悩みます…ファインダー泣かせです笑
「通天の紅葉」という言葉があるように、やはり紅葉の季節が一番映えますが、かなりの人だかりになり、写真撮影できないこともあるので注意が必要です。ゆっくり写真を撮るなら青紅葉の季節がおすすめです。
ちなみに、東福寺には通天橋の他にも、「偃月橋(えんげつきょう)」と「臥雲橋(がうんきょう)」もあり、この3つの橋は「東福寺三名橋」と呼ばれています。
新旧の融合・方丈庭園
東福寺の方丈には重森三玲(しげもりみれい)作庭の「八相の庭」というお庭があります。
大方丈という建物を取り囲むように東西南北にお庭が配置されていて、合計8つの模様が描かれていることから「八相の庭」という名前になっているそうです。
南庭の前では座れるようになっているのでゆっくりのんびりお庭(枯山水)をご覧いただけます。歩くと廊下がキュッキュと良い音を奏でてくれますよ笑
個人的に見入ったのが北庭です。苔と石が市松模様になっていて、モダンアートのようなお庭です(写真)。古風なお寺にもマッチしていていい感じです。
何を思う?・国宝「三門」
東福寺の三門は日本三大門の一つなので、絶対見ておきましょう!
※ちなみに他の2つは南禅寺(京都府)と久遠寺(山梨県)です
残念ながら創建時のものは焼失してしまっていますが、現在のものは応永2年(1405年)に室町幕府第4代将軍足利義持によって再建され、禅寺の三門としては最大にして最古と言われています。
「東福寺について」でも紹介しましたが、明治14年(1881年)にはこの三門の前にあった仏殿や法堂が焼失してしまいました。焼き崩れていく仏殿や法堂を前にして、この三門は何を思っていたのだろうか…(ちなみに写真は三門の間から見える現在の本堂です)
三門は二階建てになっていて、二階部分に仏像が安置され、柱や天井に絵が描かれています。しかし特別拝観時しか見ることができません。
お食事中ならすみません・東司
南側にある「六波羅門」から境内に入るとすぐに見えるのが「東司(とうす)」という長い建物(写真)。
東司って何?と思って調べてみると、「トイレ」でした!しかもこちらは室町時代前期のもので、日本最古のトイレだそうです。
※今は重要文化財になっていますので、今使うと絶対怒られます…
東福寺では修行僧が多く、百人以上が一斉にこの東司に駆け込んだことから「百雪隠(ひゃくせっちん)」とか「百人便所」とも呼ばれていたそうです。今の時代でしたら「百人並んでも大丈夫!」っていう物置みたいなCMができそうですね笑
しかし用を足すというのも修行の一つだったそうで、用を足す作法も結構厳しかったとか。
塔頭巡りもおすすめです
東福寺の塔頭は現在25あり、最盛期(室町時代)には101もあったそうです。現在ある25の塔頭すべてが拝観可能というわけではなく、いつでも拝観可能な塔頭は限られています。
いつでも拝観可能な塔頭の中で、個人的に一番おすすめなのが境内の西側にある「芬陀院(ふんだいん)」というところ。
別名「雪舟寺(せっしゅうじ)」とも呼ばれていて、室町時代に水墨画家として名をはせた雪舟が作ったとされるお庭を見ることができます。茶室の円窓からお庭が見えるのですが(写真)、チラ見えな感じが京都らしくなんとも風流!
芬陀院以外にも常時拝観可能な塔頭があるので、お時間がありましたら塔頭巡りもどうでしょうか?
東福寺、君の名は…
東福寺という名前は、奈良の二大寺院ともいえる「東大寺」と「興福寺」からとられているそうです。
東大寺を意識してか、かつてあった仏殿の御本尊は15mもの巨大な仏像で、そのことから東福寺は「新大仏寺」とも呼ばれていたそうです(ちなみに、現在の奈良の大仏も約15m)。
※残念ながらその御本尊は明治の火災で焼失し、左手だけ残っています
また、「伽藍面(がらんづら)」というニックネームもあるそうで、その名の通り京都でも有数の伽藍規模を誇っています。
東福寺と言えば通天橋ばかりがフィーチャーされがちですが、ぜひゆっくり境内全体を散策していただいて、「東福寺の伽藍面」を堪能されてください!
ぐるっと東福寺Around Tofukuji
東福寺の境内には他にも注目してほしいスポットや展示物があります。
ここでは厳選してご紹介します。
境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は1時間くらいです
(塔頭は除く)
六波羅門
境内の南側にある門です。元は六波羅門探題にあったものがこちらに移されたと伝わっています。月下門とともに境内で最も古い建築物だそうです。
本堂
現在の本堂は、明治14年(1881年)に焼失した仏殿や法堂(講堂)に代わって、昭和9年(1934年)に建てられました。天井には雲龍図が描かれていますが、中に入って見ることはできません。
禅堂(僧堂)
本堂の西(向かって左)側にあります。貞和3年(1347年)に建てられたもので、国内最古の僧堂と言われています。こちらでは400人もの僧侶が修行を行っていたこともあったそうです。
殿鐘楼
禅堂の北にあります。すぐ隣が経蔵になっています。室町時代後期の建物で、中の銅鐘は西寺(廃寺)のものと伝わっています。ただし銅鐘は現在収蔵庫に保管されています。
浴室
三門の南東にあります。その名の通り、僧侶の入浴施設です(今でいうサウナに近い)。国内では最大で、東大寺に次いで2番目に古い(京都では一番古い)浴室だと言われています。
五社成就宮
文禄3年(1594年)に建立されたもので、東福寺の鎮守社になっています。石清水八幡・賀茂・稲荷・春日・日吉の五社を祀っていることから五社明神社とも呼ばれているそうです。
十三重石塔
五社成就宮の近くにあります。康永2年(1343年)、九條道家が東福寺創建を祈願した時に造立したそうですが、康永2年にはすでに九條道家は亡くなっているのでよくわかりません…
愛染堂
室町時代前期の建物で、元は塔頭の三聖寺(廃寺)にあったものがこちらに移築されたそうです。愛染明王が祀られています。通天橋拝観時でしか行けません。
開山堂(常楽庵)
通天橋を進んで右手の方に行くとあります。東福寺の開山である円爾弁円(えんにべんねん)を祀っているところです。こちらでも少しお庭が楽しめるようになっています。
月下門(月華門)
境内の西にある門です。元は亀山天皇の御所にあったものがこちらに移されたそうです。鎌倉時代前期のもので、東福寺では最古の建物になります。
偃月橋
庫裏(方丈庭園受付)の左側にある細い道を進んでいくとあります。慶長8年(1603年)に建築されたもので、こちらでも木々を楽しむことができます。
臥雲橋
境内の北西にある橋です。通天橋や偃月橋と同様、橋上から木々を楽しむことができます。この橋から見る通天橋の光景もなかなかいい感じです。
仁王門
境内の北西にある門です。元は塔頭の三聖寺(廃寺)の仁王門として使われていたものだそうです。こちらに安置されていた仁王門は現在収蔵庫で保管されています。
東福寺の紅葉
東福寺と言ったら「通天の紅葉」とも呼ばれているくらい、紅葉の名所になっています。この写真は臥雲橋から見た通天橋で、こちらの方から見る景色も良い感じです。
御朱印
東福寺の御朱印は庫裏の中で書いていただけます。直書き、書置きの複数種類ありますが、私は一番オーソドックスの、直書き「大佛宝殿」にしていただきました。
ここからは東福寺の塔頭(一部)です
お時間がありましたら周ってみてください(通常非公開のところがあります)
万寿寺
境内最北にあります。白河上皇が皇女の菩提を弔うために建立したお堂が始まりで、後に東福寺の塔頭となりました。かつては京都五山の一つにも挙げられていました。
退耕庵
東福寺の第43世住持・性海霊見(しょうかいれいけん)によって創建された塔頭です。応仁の乱で荒廃しましたが、慶長4年(1599年)に安国寺恵瓊(あんこくじえけい)によって再興されました。
盛光院
文永年間(1264~1275年)に直翁智侃(じきおうちかん)により創建されました。通常は非公開ですが、紅葉の季節のみ特別拝観が可能です。
勝林寺
天文19年(1550年)に創建され、毘沙門天を御本尊とされているお寺です。春と秋に特別拝観が可能です。また、写経や写仏、座禅体験も可能です。
栗棘庵(りっきょくあん)
永仁2年(1294年)に東福寺第4世住持・白雲慧暁(はくうんえぎょう)によって創建された塔頭です。紅葉の季節のみこちらでお料理をいただけるそうです。
善慧院(ぜんねいん)
明治期に「虚無僧発祥のお寺」として知られる明暗寺と合併し、現在は尺八の根本道場として知られているそうです。
同聚院(どうじゅいん)
こちらの御本尊の不動明王坐像は藤原道長により造立されたものだと言われています。こちらはいつでも拝観可能です。
霊雲院
明徳元年(1390年)に岐陽方秀(きほうほうしゅう)が開いた塔頭です。こちらは拝観可能で、「九山八海の庭」や「臥雲の庭」などがご覧いただけます。
一華院
永徳二年(1382年)に東漸健易(とうざんけんえき)が創建したと伝わっています。通常は非公開で、紅葉の季節のみ拝観可能です。
天得院
東福寺第30世住持・無夢一清(むむいっせい)が創建した塔頭です。通常非公開ですが、初夏と秋のみ拝観できます。初夏は桔梗、秋は萩が鑑賞できます。
桂昌院
東福寺第30世住持・双峰宗源(そうほうそうげん)が創建した塔頭です。後宇多天皇の菩提寺です。通常非公開ですが、三面大黒天をご覧いただけます。
東光寺
応長元年(1311年)に東福寺第7世住持・無為昭元(むいしょうげん)により創建されました。通常非公開ですが、11月のみ拝観可能です。
願成寺
平城天皇の子で、在原業平の父である阿保(あぼ)親王の創建と言われています。阿保親王を供養する親王祭(11月3日)のみ自由に入ることができます。
正覚庵
正応3年(1290年)に奥州伊達家4代当主・伊達政依(だてまさより)が創建しました。毎年11月23日は筆記用具を供養する「筆供養」が行われます。
光明院
明徳二年(1391年)に金山明昶(きんざんみょうしょう)によって創建されました。別名「虹の苔寺」とも呼ばれていて、いつでも拝観可能です。
南明院
境内の最南端にあります。応永21年(1414年)に室町幕府4代将軍足利義持が創建しました。こちらには豊臣秀吉の妹の旭姫のお墓があります。ただし、拝観はできません。
龍吟庵(りょうぎんあん)
庫裏のすぐ近くにあります。正応4年(1291年)に第3世住持・無関普門(むかんふもん)によって創建されました。春と秋に特別拝観可能です。東福寺の塔頭の中で最も格が高いそうです。
即宗院
嘉慶元年(1387年)に薩摩の島津氏久が創建しました。幕末期に西郷隆盛と月照がこちらで倒幕の話し合いをしていたそうです。春と秋に特別拝観があります。
アクセスと拝観情報Access & Information
東福寺へは最寄駅から、あるいは最寄りのバス停から徒歩で行けます。
最寄り駅から徒歩で行く場合
東福寺の最寄り駅は、JR奈良線あるいは京阪本線「東福寺」駅です。
駅の東側にある「本町通」まで出て、そのまま南へ進みます。
約7分ほど歩くと左手側に東福寺の「中大門」が見えますので、門をくぐって進みます。
そうすると日下門があり、その門の中に入ると本堂の近くに出てきます。
最寄りのバス停から徒歩で行く場合
東福寺の最寄りのバス停は「東福寺」です。
※停車するバスの系統は「202」「207」「208」「58 (土日祝のみ)」「88 (土日祝のみ)」です
バス停から西側に進むと、「大本山名勝通天橋通」と書いた石塔がありますので、そのまま進んでいきます。
道なりに進むと再度石塔が出てきますので、石塔のある方向(右)へ行きます。しばらく歩くと臥雲橋があり、さらに進むと左手側に日下門があります。日下門をくぐって行くと本堂の近くに出てきます。
主要バス停(駅)からの乗車時間は下記の通りです。
- 「京都駅前 (各線「京都」駅)」から
⇒208系統:乗車時間約16分
⇒88系統(土日祝のみ):乗車時間約8分 - 「京都駅八条口 (各線「京都」駅)」から
⇒58系統(土日祝のみ):乗車時間約8分 - 「九条近鉄前 (近鉄「東寺」駅)」から
⇒202 / 207 /208系統:乗車時間約11分 - 「四条京阪前 (京阪「祇園四条」駅)」から
⇒電車(京阪本線)で行った方が良いです - 「四条河原町 (阪急「河原町」駅)」から
⇒207系統:乗車時間約20分
※バスか徒歩で京阪「祇園四条」駅まで行って、電車(京阪)で行く方法もあります - 「四条大宮 (阪急「大宮」駅 / 京福「四条大宮」駅)」から
⇒207系統:乗車時間約32分
乗車時間は目安です。交通状況等により大幅に変わることがありますのでご了承ください。
拝観時間 | 9:00~16:00 (4/1〜10/31) 8:30~16:00 (11/1〜12/1) 9:00~15:30 (12/2〜3/31) ※拝観受付は終了時刻まで |
拝観料 | 【通天橋・開山堂】 大人(高校生以上):600円 小学生・中学生:300円 【本坊庭園】 大人(高校生以上):500円 小学生・中学生:300円 【通天橋・開山堂・本坊庭園共通拝観券】 大人(高校生以上):1000円 小学生・中学生:500円 ※障害者手帳提示で1名のみ無料 |
拝観料 (秋季:11/9~12/1) | 【通天橋・開山堂】 大人(高校生以上):1000円 小学生・中学生:300円 【本坊庭園】 大人(高校生以上):500円 小学生・中学生:300円 ※11/9~12/8は共通拝観券なし |
所在地 | 京都市東山区本町15丁目778 |
TEL | 075-561-0087 |
ホームページ | https://tofukuji.jp/ |
その他 | 無料駐車場有 塔頭の拝観は別料金 |
ちょっとそこまでNeighborhood
東福寺の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。
お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
泉涌寺
電車の最寄り駅は東福寺と同じJR / 京阪「東福寺」駅です。東福寺の境内からだと徒歩20分ほどで行けます。泉涌寺は皇族との関係が深く、由緒あるお寺です。泉涌寺にも塔頭があり、中でも雲龍院のお庭は人気があります。
⇒泉涌寺についてはこちらをご覧ください
伏見稲荷大社
伏見稲荷大社の最寄り駅はJR奈良線「稲荷」駅か、京阪本線「伏見稲荷」駅で、東福寺駅の2つ隣です。千本鳥居が幻想的で神秘的です。ただし、頂上まで行くのはめちゃくちゃしんどいです笑
東福寺周辺地図
関連記事Related articles
東福寺の名前の基になった、奈良で一番有名なお寺です。「奈良の大仏さん」をはじめ、貴重な仏像をご覧いただけます。シカさんもたくさんいますよ!
こちらも東福寺の名前の基になったお寺で、藤原氏の氏寺です。仏像界のアイドルともいえる阿修羅像をはじめ、たくさんの仏像をご覧いただけます。
東福寺の住持であった無関普門(むかんふもん)は南禅寺の開山(初代住持)になりました。また、南禅寺の三門は東福寺と同じ日本三大門の一つとして数えられています。