京都古寺【泉涌寺】
泉涌寺についてAbout Sennyuji
泉涌寺は長きにわたり皇室と深い関わりを持つ、由緒あるお寺です。
まずは泉涌寺の歴史について簡単に見ていきますね
読み方は「せんにゅうじ」。真言宗泉涌寺派総本山。山号は「泉山(せんざん)」あるいは「東山(とうざん)」。
大同2年(807年)に創建された「法輪寺」が始まりとされています。この法輪寺は弘法大師・空海が建立したとも、藤原緒嗣(藤原不比等のひ孫)が建立したとも言われ、定かではありません。やがて法輪寺は「仙遊寺」と改められました。
時代を経て仙遊寺は荒廃していきますが、俊芿(しゅんじょう)律師が宇都宮信房から仙遊寺を寄進され、そこに大伽藍を造営しました。その時に「泉涌寺」と改められました。
応仁の乱により全山焼失してしまいますが、織田・豊臣・徳川時代にかけて諸堂が復興され、現在に至ります。
泉涌寺の見どころ5選Highlights
泉涌寺の見どころを5つ厳選してご紹介いたします。
ぜひここに注目しながら拝観してみてください
ウンリューを探せ!仏殿
拝観受付をまっすぐ進むと、泉涌寺の本堂「仏殿」があります。こちらの御本尊は運慶作と伝わる『阿弥陀(左)・釈迦(中央)・弥勒(右)三尊像』で、現在・過去・未来を表していると言われています。
そして、仏殿でぜひ注目していただきたいのが天井に描かれた狩野探幽作の「雲竜図」!ただ、天井までの距離が結構あるので探すのにやや苦労するかもしれません…
ぜひご自身で探していただきたいため、天井のどのあたりかはここではあえて言いません。「ウォーリーを探せ」のようにくまなく探してみてください笑
「雲龍図」の他にも、御本尊の背後にある「飛天図」、御本尊の裏にある「白衣観音図」も狩野探幽作で、そちらも必見です。
泉涌寺オリジン・泉涌水屋形
「泉涌寺について」でもご紹介しましたが、俊芿律師の時代に仙遊寺から泉涌寺へ名前が改められました。
「泉が涌(わ)く寺」と書いていることからも想像できるように、境内で水が涌き出したためそう名付けられたそうです。
仏殿の近くには名前の由来となった清泉があり、今でも涌き出ているそうです。現在は寛文8年(1668年)に再建された屋形(写真)で覆われています。
通常は閉じられていて中を見ることはできませんが、この屋形の内部にも「雲竜図(別所如閑筆)」が描かれているそうです。
ここが泉涌寺の原点なのかと思うと、感慨深いものがあります。
美しき楊貴妃観音
拝観受付を入ってすぐ左手にあるのが「楊貴妃観音堂(写真)」です。こちらには『楊貴妃観音像』と呼ばれる観音様がいらっしゃいます。
こちらの観音様は、寛喜2年(1230年)に湛海(たんかい)律師が南宋より持ち帰ったもので、唐の玄宗皇帝が楊貴妃をかたどって作らせたものと伝わっています。
世界三大美人の楊貴妃の名の通り、非常に美しいお顔立ちをされた観音様で、光背(観音様の後ろにある飾り)と宝冠(観音様の頭に乗せているもの)の彩色がとても鮮やかに残っています。
何やらこちらの観音様に祈願すると美人になれるという噂があるとのことで、女性からの信仰が篤いそうです。私はもっとイケメンになれるよう祈願しました(楊貴妃観音様の担当範囲かどうかわかりませんが笑)
「おてら」じゃなくて「みてら」だよ
泉涌寺の境内を歩いていると「御寺 泉涌寺」の文字を多く見かけます。「御寺」は「おてら」と読むのではなく、「みてら」と読みます。「みてら」というと何となく高貴な印象を受けますが、それもそのはず。実は泉涌寺は皇族の方々の菩提寺になっています。
境内の奥には月輪陵(つきのわのみささぎ)と後月輪陵(のちのつきのわのみささぎ)いうところがあり(写真)、こちらには四条天皇をはじめとして19人の天皇の陵や灰塚、9人の皇族の方のお墓があるそうです。
泉涌寺の境内にはこの他にも、歴代天皇のご位牌をお祀りした霊明殿や、元々京都御所の御黒戸(おくろうど:仏間)であった海会堂(かいえどう)があります。
このことからも「御寺(みてら)」の名にふさわしいお寺といえます。
雅なお庭・御座所庭園
皇室との結びつきというと、泉涌寺には御座所(ござしょ)と呼ばれるところがあります。
こちらは皇族の方が泉涌寺に来られた場合の御休息所になっていて、元は京都御所の皇后宮にあった御里御殿を移築したものだそうです。
また、御座所は特別拝観時のみ拝観することができるようになっていて、中には庭園があります(写真)。
歴代の天皇様や皇后様がいらっしゃったであろうところにいると、雅な雰囲気に圧倒されそうです笑
特に秋の紅葉の季節は人気があり、運よく拝観できる場合は絶対におすすめします!
こちらのお庭も素敵です!・雲龍院
泉涌寺には多くの山内寺院(塔頭)があり、中でもおすすめなのが境内の南にある「雲龍院」。泉涌寺の境内からでしたら徒歩5分ほどで行けます。
雲龍院には御座所庭園に負けないくらいの庭園があり、個人的に良かったのが蓮華の間にある「色紙の窓」(写真)。4つの障子窓からお庭がチラ見えになっていて、やや斜めからみると左から椿・灯籠・楓・松が窓から見えるしかけがされています。
この他にも水琴窟や雲龍図など、小さいお寺ながらも見どころが豊富です。
ちなみに、こちらではお抹茶付きの写経や写仏体験ができますので(別途料金必要)、静かなところで精神統一されてみてはいかがでしょうか?
ぐるっと泉涌寺Around Sennyuji
泉涌寺の境内で特に気になったものをいくつか取り上げておきます。
境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は40分くらいです
(山内寺院への拝観時間は除く)
大門
泉涌寺中心部に一番近い門です。慶長年間(1596~1615年)に造営された内裏の南門を移築したと伝えられています。「東山」の額が掲げられているので東山門とも呼ばれているそうです。
心照殿
楊貴妃観音堂のすぐ隣にあります。泉涌寺に伝わる仏像や宝物、歴代天皇のご遺品などを収蔵しています。年に4回企画展も行っているそうです。追加料金なしでご覧いただけます。
降り参道
お寺の参道は平地か、やや高いところに本堂が建っていることが多いですが、泉涌寺はご覧の通り、本堂(仏殿)へは降っていくようになっています。ですので「降り参道」と呼ばれています。
清少納言歌碑
泉涌水屋形の隣(向かって左)にあります。清少納言が詠んだ「夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」の和歌が刻まれています。
浴室
泉涌水屋形の隣(向かって右)にあります。その名の通り浴室ですが、お風呂というよりはサウナに近いものです。僧侶たちの身を浄めるために使われたそうです。
舎利殿
湛海律師が宋より持ってこられた釈迦の歯を奉っているところです。元は京都御所にあった建物をこちらに移築したそうです。非公開のため中に入ることはできません。
霊明殿
歴代天皇や皇后など、皇族の方々のお位牌や御尊像を奉るところです。現在の建物は明治17年(1884年)に再建されました。こちらも非公開のため、中に入ることはできません。
本坊
泉涌寺の寺務所です。御座所庭園へ行くにはこちらから入っていきます。本坊内もちょっとしたお庭のようになっています。本坊入って左には少し広めの休憩所もあります。
御朱印
泉涌寺の御朱印は本坊でいただけます。「霊明殿」と書いていただけます。御寺(みてら)の名にふさわしく、菊の御紋の判が押されています。
ここからは泉涌寺の山内寺院(塔頭)です
雲龍院
泉涌寺の南にあります。応安5年(1372年)に泉涌寺の別院として後光厳上皇によって創建されました。応仁の乱や地震等により罹災しますが、のちに復興されました。
善能寺
泉涌寺の北西にあり、境内からすぐに行けます。元は八条油小路にあり、弘法大師による創建と伝わっています。明治18年(1885年)にこちらに移されました。
来迎院
泉涌寺の北にあります。弘法大師創建と伝わっています。弘法大師作といわれる三宝大荒神像や、弘法大師が湧出させたと伝わる独鈷水(どっこすい)があります。
今熊野観音寺
来迎院の北にあります。弘法大師が熊野権現から「ここに観音様をお祀りしなさい」と言われ、十一面観音像を祀ったのが始まりと言われています。
悲田院
泉涌寺大門を出て北西の方角に歩いていくとあります。悲田院(ひでんいん)と呼ばれる福祉施設があったところに寺が創建され、後にこちらに移されました。
新善光寺
泉涌寺大門を出て北の方角へ歩いていくとあります。後嵯峨天皇が長野の善光寺と同じ阿弥陀如来を造らせ、それを本尊にしたので「新善光寺」と呼ばれているそうです。
戒光寺
新善光寺の近くにあります。後掘河天皇の勅願寺として創建されました。御本尊は運慶・湛慶親子の合作で、10mにも及ぶ「丈六釈迦如来」が見られます。
法音院
戒光寺のほぼ向かいにあります。応仁の乱時に泉涌寺とともに焼失しましたが、その後現在地で復興されました。お庭を見ながらの写仏体験ができます。
即成院
泉涌寺の総門近くにあります。藤原頼通の子・橘俊綱が阿弥陀堂を建立したのが始まりと言われています。那須与一ゆかりのお寺で、那須与一のお墓があります。
アクセスと拝観情報Access & Information
泉涌寺へは最寄駅から、あるいは最寄りのバス停から徒歩で行けます。
最寄り駅から徒歩で行く場合
泉涌寺の最寄駅はJR奈良線あるいは京阪本線の「東福寺」駅です。
東福寺駅から南へ進み九条通まで出て、そこから東の方向へ進んでいきます。
「泉涌寺道」の交差点まで来て右へ曲がりそのまま進むと泉涌寺の総門が見えます。その総門を道なりに進んでいくと泉涌寺の大門(拝観受付)まで来ます。
駅から泉涌寺大門まで徒歩でおよそ20分です。
最寄りのバス停から徒歩で行く場合
泉涌寺の最寄りのバス停は「泉涌寺道」です。
※停車するバスの系統は「202」「207」「208」「58 (土日祝のみ)」「88 (土日祝のみ)」です
バス停の近くに「泉涌寺道」の交差点がありますので、そこを東へ進んでいきます。そのまま進むと泉涌寺の総門があり、その総門を道なりに進んでいくと泉涌寺の大門(拝観受付)まで来ます。
バス停から大門まで徒歩約13分です。
主要バス停(駅)からの乗車時間は下記の通りです。
- 「京都駅前 (各線「京都」駅)」から
⇒208系統:乗車時間約14分
⇒88系統(土日祝のみ):乗車時間約7分 - 「京都駅八条口 (各線「京都」駅)」から
⇒58系統(土日祝のみ):乗車時間約7分 - 「九条近鉄前 (近鉄「東寺」駅)」から
⇒202 / 207 /208系統:乗車時間約11分 - 「四条京阪前 (京阪「祇園四条」駅)」から
⇒207系統:乗車時間約16分 - 「四条河原町 (阪急「河原町」駅)」から
⇒207系統:乗車時間約18分 - 「四条大宮 (阪急「大宮」駅 / 京福「四条大宮」駅)」から
⇒207系統:乗車時間約27分
乗車時間は目安です。交通状況等により大幅に変わることがありますのでご了承ください。
拝観時間 | 9:00~16:30 (3月〜11月) 9:00~16:00 (12月〜2月) ※受付終了時刻の30分後に閉門 |
拝観料 | 【伽藍拝観】 大人(高校生以上):500円 小学生・中学生:300円 【特別拝観】 大人(中学生以上):500円 |
所在地 | 京都市東山区泉涌寺山内町27 |
TEL | 075-561-1551 |
ホームページ | https://mitera.org/ |
その他 | 無料駐車場有 JAFクーポン利用可(散華授与) |
ちょっとそこまでNeighborhood
泉涌寺の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。
お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
東福寺
電車の最寄り駅は泉涌寺と同じJR / 京阪「東福寺」駅です。泉涌寺の境内からだと徒歩20分ほどで行けます。東福寺は「通天の紅葉」として有名な通天橋や、重森三鈴作庭の「方丈庭園」が有名です。
⇒東福寺についてはこちらをご覧ください
伏見稲荷大社
伏見稲荷大社の最寄り駅はJR奈良線「稲荷」駅か、京阪本線「伏見稲荷」駅で、東福寺駅の2つ隣です。千本鳥居が幻想的で神秘的です。ただし、頂上まで行くのはめちゃくちゃしんどいです笑
泉涌寺周辺地図
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