京都古寺【曼殊院】
曼殊院についてAbout Manshuin
曼殊院は洛北屈指の名刹といわれ、皇室とゆかりのある格式高いお寺です。
まずは曼殊院の歴史について簡単に見ていきますね
読み方は「まんしゅいん」。天台宗。山号はなし。「曼殊院門跡」とも呼ばれています。
天台宗の祖・最澄が比叡山内に建てた一つのお堂が始まり。後に「東尾坊(とうびぼう)」と呼ばれるようになり、天仁年間(1108~1110年)に「曼殊院」と名が改められました。
明応4年(1495年)に伏見宮貞常親王の子・慈運(じうん)法親王が入寺された以降は門跡寺院(皇族出身の方が住職になるお寺)となりました。
曼殊院の所在地は比叡山内から北山地域へ、その後洛中(相国寺付近)となり、明暦2年(1656年)に現在地へ移りました。
平成24年(2012年)には天皇皇后両陛下(現上皇・上皇后)が曼殊院へ行幸され、今なお皇族との関係が深いお寺となっています。
曼殊院の見どころ5選Highlights
曼殊院の見どころを5つ厳選してご紹介いたします。
ぜひここに注目しながら拝観してみてください
悲願の再建!宸殿
曼殊院で個人的に一番注目していただきたいのが宸殿(写真)。令和4年(2022年)に、なんと150年ぶりに再建されました!
宸殿は歴代天皇や皇室の方々の位牌を祀るところで、門跡寺院では最も重要な建物になります。こちらの宸殿では御本尊『阿弥陀如来坐像』をはじめ、国宝『黄不動』の複製などがご覧いただけます。
ちなみに、150年前まであった宸殿は療病院(現・京都府立医科大学附属病院)建設に貢献するため明治政府に献納し失いました。以来、曼殊院にとって宸殿再建が悲願となっていました。
再建に至るきっかけは、ある看護師さんから退職金の一部を寄進されたためで、なんとその看護師さんは京都府立医科大学附属病院にお勤めだった方だとか!やはり歴史は巡り、「縁」というのはあるんですね~
「小さな桂離宮」、ここにあり!
宸殿以外にも、大書院や小書院、そしてその周りの枯山水庭園も必見です!これらの建物や庭園は、現在地へ移った当時の状態で残り、設計には当時の門跡(住職)である良尚(りょうしょう)法親王の意向が強く反映されたそうです。
皇族ご出身の方らしく、いわゆる「公家好み」になっているのが特徴で、特に襖と襖の間からチラ見えする枯山水庭園は雅な雰囲気が漂います笑
※残念ながら堂内及び堂内からの写真撮影は禁止となっているので、写真は縁側から撮った枯山水庭園です
ちなみに、良尚法親王の父・八条宮智仁親王は桂離宮を造営された方で、曼殊院は桂離宮との共通点も多いことから「小さな桂離宮」とも呼ばれているそうです。
赤・黄・緑…色とりどり
曼殊院は紅葉の名所として知られ、毎年多くの観光客で賑わいます。
枯山水庭園の白砂のキャンバスの上にあちこちで赤や黄で彩られます。紅葉しない木や苔の緑もあるので、赤・黄・緑…色とりどりです!
※以前は夜間特別拝観(ライトアップ)があったようですが、現在は行っておられないとのことです。残念…
枯山水庭園もすばらしいですが、個人的には京都薬用植物園あたりから突き当りの勅使門までの参道がおすすめです。参道の両端には木々が植えられていて、まるでトンネルの中を歩いているようです(写真)。こちらも赤・黄・緑…色とりどりですよ笑
曼殊院では例年11月下旬頃が紅葉の見頃になっているので、ぜひこの季節に合わせてお越しください!
曼殊院、君の名は…
「曼殊院について」でもご紹介しましたが、曼殊院は元々「東尾坊」という名前でしたが、後に「曼殊院」と名前が変わりました。
曼殊院の「曼殊」は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」に由来すると言われています。曼珠沙華というのはサンスクリット語で「赤い花」を表す言葉だそうで、一般には彼岸花を指す言葉として使われているようです。ただ、曼殊院では庭園に別の赤い花が咲きます。それが「霧島つつじ」です(写真)。
5月初旬頃になると寺号の由来にふさわしく赤く咲き誇ります。赤の霧島つつじと新緑の木々…赤と緑は補色関係になっているのでそれぞれが映えて見えますよ!
紅葉の季節だけでなく、新緑の季節もおすすめです!
堂内には貴重な展示物がたくさん!
意外と言ったら失礼ですが、曼殊院の堂内では数々の貴重な展示物が拝見できます。狩野永徳の襖絵や狩野探幽の障壁画。他にも織田信長や武田信玄、豊臣秀吉からの文書、源氏物語の写本などなど。
拝観時にいただける紙(写真)に大まかにどんな展示物があるのか書かれていますので、そちらを見ながらの拝見をおすすめします。
結構たくさんあるんだなぁと拝観順路に従って廊下を歩いていると何やら冷たい視線を感じる…ヒョっと見るとそこには、おどろおどろしい顔をした怖い幽霊の掛け軸が!
曼殊院の幽霊の掛け軸は結構有名らしく、引き取り手がおらず巡り巡ってこちらにやってきたとか、写真を撮ると祟りが起きるなんて言われているそうです…こわいこわい~
北野天満宮との900年の関係
曼殊院の境内の西には天満宮があります(写真)。こちらの天満宮は曼殊院が現在地に移ってくる前からすでにあったもので、境内最古(室町時代)の建物になります
※元は山の方にあったものを、こちらに移動したそうです
天満宮といえば総本社は北野天満宮ですが、実は曼殊院と北野天満宮は歴史的にとても関係が深いです。曼殊院がまだ「東尾坊」だった頃、北野天満宮が創建されました。その時の東尾坊住職は是算(ぜさん)国師という方で、菅原氏のご出身だったことから北野天満宮の初代別当職に選ばれました。
以後、東尾坊(曼殊院)の住職が北野天満宮の別当職も兼務することが慣例となり、その関係がなんと約900年も続きました。ただ、明治期の神仏分離令以後はその関係は解消されています。
ぐるっと曼殊院Around Manshuin
曼殊院の境内で見どころ以外で気になったものをご紹介します。
境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は30分くらいです
勅使門
曼殊院通の突き当りにある門で、曼殊院の正門です。ただしこちらから入ることはできません。曼殊院がこちらに移った明暦2年(1656年)ごろの造営と言われています。
梟の手水鉢
小書院の縁先に置かれている手水鉢で、フクロウが彫刻されていることから「梟の手水鉢」と呼ばれています。水に月の光を反射させて明かりにしたとも言われています。
盲亀浮木(もうきふぼく)之庭
宸殿前の庭です。100年に一度しか息継ぎをしないという目の見えない亀が水面から顔を出すと、穴の開いた浮き木に頭がはまったという話が基になっているそうです(仏教との出会いもこれくらい奇跡的だというたとえ)。
護摩堂
宸殿の隣にあるお堂で、曼殊院がこちらに移った明暦年間の造営と言われています。御本尊は平安時代に作られた「大聖不動明王像」です。公開はされていません。
弁天堂
曼殊院天満宮の隣にあり、弁財天が祀られています。比叡山延暦寺にある無動寺谷辯天堂の御本尊の御前立となっており、昔はこちらに参拝してから無動寺に行っていたそうです。
御朱印
曼殊院の御朱印は書き置きのみとなっており、拝観受付のすぐ隣でいただけます。いくつか種類がありますが、私は黄不動が描かれている「黄不動尊」にしていただきました。
アクセスと拝観情報Access & Information
曼殊院へは最寄駅から、あるいは最寄りのバス停から徒歩で行けます。
最寄り駅から行く場合
曼殊院の最寄り駅は叡山電鉄「修学院」駅です。
修学院駅から北山通を東へ進み、白川通に出ます。今度は白川通を南へ進み、ガソリンスタンドの向かいに細い路地があるのでそちらを入っていきます。
そのまま進むと突き当りまで来ますので、左へ曲がり、すぐに二股に分かれますので、今度は右へ進みます。
そのまま進むと曼殊院の勅使門まで来ますので、そこから左へ曲がりすぐに右へ曲がると通用門前まで来ます。
駅から通用門まで徒歩約24分です。
最寄りのバス停から徒歩で行く場合
曼殊院の最寄りのバス停は「一乗寺清水町」です。
※停車するバスの系統は「5」「31」「北8」です
バス停から北へ行くと交差点がありますので、そこを右へ曲がります。
突き当りまで来ると左へ、そしてその先の十字路では右へ曲がります。さらに先に十字路がありますので左へ曲がるとすぐに二股に道が分かれますので今度は右へ進みます。
そのまま進むと曼殊院の勅使門まで来ますので、そこから左へ曲がりすぐに右へ曲がると通用門前まで来ます。
バス停から通用門まで徒歩約19分です。
主要バス停(駅)からの乗車時間は下記の通りです。
- 「京都駅前 (各線「京都」駅)」から
⇒5 / 31系統:乗車時間約51分 - 「国際会館駅前 (地下鉄烏丸線「国際会館」駅)」から
⇒5 / 31系統:乗車時間約9分 - 「北大路バスターミナル (地下鉄烏丸線「北大路」駅)」から
⇒北8 系統:乗車時間約20分 - 「三条京阪前 (京阪「三条」駅)」から
⇒5系統:乗車時間約26分 - 「四条河原町 (阪急「河原町」駅)」から
⇒5 / 31系統:乗車時間約33分 - 「四条烏丸 (地下鉄烏丸線「四条」駅)」から
⇒5 / 31系統:乗車時間約37~40分
乗車時間は目安です。交通状況等により大幅に変わることがありますのでご了承ください。
拝観時間 | 9:00~17:00 (受付終了は16:30) |
拝観料 | 800円 |
所在地 | 京都市左京区一乗寺竹ノ内町42 |
TEL | 075-781-5010 |
ホームページ | https://www.manshuinmonzeki.jp/ |
その他 | 境内に無料駐車場有 (普通車のみ) |
ちょっとそこまでNeighborhood
曼殊院の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。
お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
修学院離宮
曼殊院から北に向かって徒歩約11分で行けます。後水尾上皇によって造営された山荘です。上・中・下の離宮で構成され、総面積は甲子園球場の約10倍だそうです。参観には事前の予約が必要となりますので注意が必要です。
鷺森神社
曼殊院から北西に向かって徒歩約8分で行けます。貞観年間(859年~877年)の創建と伝えられ、元は修学院離宮にあったのをこちらに移されました。「八重垣」という石があり、そちらに触れると良縁や家内安全のご利益があるそうです。
圓光寺
曼殊院から南西に向かって徒歩約13分で行けます。徳川家康により創建されたお寺です。柱と柱の間を額縁に見立てた額縁庭園で有名です。特に紅葉の季節は人気があり、その時期のみ事前予約制になります。
詩仙堂
曼殊院から南西に向かって徒歩約14分で行けます。徳川家康の家臣だった石川丈山の山荘で、後に寺院となりました。詩仙の間から見られる庭園が人気があり、「鹿おどし」の発祥の地とされています。
曼殊院周辺地図
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曼殊院と同様、「天台宗五ケ室門跡」の一つです。わらべ地蔵や紅葉でお馴染みのお寺で、『女ひとり』で歌われたことでも有名です。
三十三間堂を管理する妙法院も「天台宗五ケ室門跡」の一つです。三十三間堂と言えば長いお堂と、1001体の千手観音像でお馴染みです。