京都古寺【萬福寺】  

平安の息吹が残る宇治にあって、ひときわ異国情緒が漂う古寺、萬福寺 (読み方は「まんぷくじ」)。

本ページは…

  • 萬福寺の歴史や見どころについて簡単に知りたい!
  • 萬福寺の境内やその近くには何があるの?
  • 萬福寺へのアクセスは?

そんな希望や疑問をお持ちの方のために作成いたしました。

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それではまずは、萬福寺の歴史から見ていきますね!

萬福寺の歴史

萬福寺は黄檗(おうばく)宗の大本山で、山号を「黄檗山」といいます。

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萬福寺はどんな歴史を経たのか、簡単に見ていきましょう!

中国・明(みん)から来日した隠元隆琦(いんげん りゅうき)禅師が近衛家の別荘地を譲り受け、寛文元年(1661年)に創建しました。
※「黄檗山萬福寺」の寺名は、隠元禅師が住職を務めていた故郷・福州(現在の福建省)の黄檗山萬福寺に由来

隠元禅師の帰依を受けた徳川家綱(江戸幕府四代将軍)や酒井忠勝(大老)らの支援により伽藍の整備が行われ、寛文9年(1669年)頃には伽藍がほぼ完成したと言われています。

しかし明治期に入ると、上地(政府に土地を上納)や陸軍省に敷地が接収されるなどで寺領の縮小や塔頭(たっちゅう:子院)の統廃合が進みました。

近年では、令和6年(2024年)に中心伽藍の「法堂」「大雄寶殿」「天王殿」の三棟が国宝に指定されました。

萬福寺の見どころ
5選+1

萬福寺にはいくつか見どころがありますが、ここでは次の5つ+1に厳選してご紹介いたします。

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それでは1つずつ詳しく見ていきますね!

国宝!萬福寺の主要三棟

萬福寺は江戸時代以降の創建ということもあり、大きな戦乱に巻き込まれることがありませんでした。そういったことから、創建時のものが未だ数多く残る貴重なお寺です。

萬福寺のメインの建物である「天王殿(てんのうでん)」「大雄寶殿(だいおうほうでん)」「法堂(はっとう)」の三棟も創建時のもので、その貴重さから令和6年(2024年)に国宝に指定されました!萬福寺に来たらこの主要三棟はぜひ見ておきたいところですね。

ちなみに、萬福寺では三門からきれいに一直線上に主要建物が並んでいます。また、左右対称に諸堂が配置され、それぞれが回廊で繋がっています。こういった伽藍配置は中国独特なもので、日本では珍しいそうです。伽藍全体を上から見ると龍のように見えることから、「龍の伽藍」と呼ばれているとか。

個性派仏像1・天王殿「弥勒菩薩」

萬福寺に来たら建物だけでなく、ぜひ仏像にもご注目いただきたい!
※萬福寺では他のお寺でも珍しく、仏像の写真撮影がOKです

中でも個人的にお気に入りなのが、天王殿にいらっしゃる弥勒菩薩(写真)。全身金色、そして不敵な笑みと福々しい太鼓腹が特徴で、写真を見るだけでもそのキャラの濃さがわかると思います笑
※この見た目から、スマホやパソコンの壁紙にしておくと何かいいことが起こりそう…

「弥勒菩薩」とはいうものの、パッと見では七福神の布袋(ほてい)さんです。一般に「弥勒菩薩」というと、広隆寺(京都)や中宮寺(奈良)の弥勒菩薩をイメージするのでかなり違和感を覚えますが、布袋さんは弥勒菩薩の化身と云われているそうで、この見た目でも「弥勒菩薩」で間違いないそうです笑

個性派仏像2・大雄寶殿「十八羅漢像」

個性的な仏像といえば、大雄寶殿の「十八羅漢像」も見逃せません。堂内の左右にずらっと並ぶ姿は壮観です。

十八羅漢というのは18人の阿羅漢(悟りを開いた聖者)のことです。その18人の中で個人的に目を引いたのが「羅睺羅(らごら)尊者(写真)」。よく見ると、胸から小っちゃい仏様が顔を出しています…

実は羅睺羅はブッダ(お釈迦様)の息子で、お顔がブサイクで全然お父さんに似ていなかったそうです…「たとえ似ていなくても、自分の心の中にはブッダがいる!」と胸を開いて証明したとか。この仏像はその時の様子を表しているそうです。

ちなみに、萬福寺には羅睺羅の胸の部分をくり抜いた顔出しパネルがあります。ぜひそこにご自身の顔を入れて写真を撮ってみてください笑

木魚の原形・開梛(かいぱん)

大雄寶殿に向かって右側には斎堂(さいどう)というお堂があり、その斎堂前にある回廊には写真のような木造の魚が吊ってあります。

こちらは隠元禅師が中国から伝えた「開梛 (かいぱん)」というもので、鱗の部分を叩いて時刻を知らせるのだとか。全長約2mほどと大きく、確かにこれを叩いたら打音が境内に響き渡りそうです。

なぜ魚なのかというと、魚は目を閉じずに一日中泳ぎ続けることから、「魚のように、寝る間を惜しんで修行に励め!」という意味が込められているとのこと。この開梛が時代を経て、法要などでもお馴染みの「木魚」に変わっていったそうです。

ちなみに、口にくわえている球は煩悩を表していて、この球を吐き出すことを意識して叩くそうです。

境内に漂う中華の風

萬福寺の境内を歩いていると、どことなく中華風なものが見受けられます。萬福寺の入口にあたる「総門」からいきなり中華です…
※初めて行ったときは、中華料理屋(萬福飯店?)に来たんかと思ってしまいました笑

総門以外にも中華っぽいものが色々見られますが、中でもよく取り上げられるのが「円窓」と「卍くずしの勾欄(こうらん)」。
※写真の右側奥に見えるのが「円窓」で、手前の木の手すりが「卍くずしの勾欄」です。ちなみに、写真の場所は法堂。

「卍くずしの勾欄(こうらん)」はかなり古くから中国から伝わっており、法隆寺などでも採用されていました。ただ、時代とともに採用されなくなり、萬福寺創建時に改めて伝えられたとのこと。ぜひ境内をあちこち回ってみて、中華なものを探してみてください!

隠元禅師がもたらしたもの

萬福寺を創建された隠元禅師ですが、師が中国から来日する際にあたって日本にもたらしたとされるものがたくさんあります。

一番有名なのがインゲン豆(写真)。「隠元(インゲン)」の名前まで付いているのでご存じの方も多いはず。その他、スイカ・レンコン・タケノコなども隠元禅師によってもたらされたそうです。

個人的に驚いたのが「明朝体」。隠元禅師が中国から持ってきた経典(版木)がまさにその明朝体だったそうです。経典を印刷したものがあちこちに広がったことで、明朝体も日本に浸透するようになりました。
※当サイトも明朝体メインになっていますので、隠元禅師様々です笑

ちなみに、その経典は1ページが縦20文字、横10行で書かれていて、それが現在の原稿用紙(400字詰め)の規格の基になっているんだとか。

ぐるっと萬福寺

萬福寺の境内には注目してほしいスポットや展示物があります。
ここでは厳選してご紹介します。

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境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は50分くらいです

総門

萬福寺の境内入口になります。元禄6年(1693年)に建立されました。シャチホコのようなものが上に付いていますが、こちらは摩伽羅(マカラ)という想像上の動物だそうです。

三門

総門をそのまま進んでいくとあります。延宝6年(1678年)に建立されました。三門に掲げられている「黄檗山」や「萬福寺」の額は隠元禅師筆のものです。門の先に拝観受付があります。

開山堂

三門を入って左側にあります。延宝3年(1675年)に建立されました。萬福寺開山の隠元禅師を祀るところで、隠元禅師像が安置されています。「卍くずしの勾欄」が見られます。

天王殿

三門を進んでいくとあります。寛文8年(1668年)に建立されました。主要伽藍の玄関的な建物で、中国では一般的なものだそうです。弥勒菩薩像の他、韋駄天像や四天王像があります。

祖師堂

天王殿を進んで左側にあります。寛文9年(1669年)に建立されました。中国禅宗の開祖である達磨(ダルマ)大師の像と、萬福寺の歴代管長の位牌が安置されています。

禅堂

祖師堂の隣(右側)にあります。寛文3年(1663年)に建立されました。その名の通り、座禅をするところです。一般の人は入れませんが、団体での申し込みであれば座禅体験ができるようです。

伽藍堂

天王殿を進んで右側にあります。寛文9年(1669年)に建立されました。伽藍を守護する伽藍神が祀られ、御本尊は華光(けこう)菩薩像、その左右に三面大黒天と弁財天が安置されています。

大雄寶殿

天王殿の先にあります。萬福寺の本堂にあたるところで、寛文8年(1668年)に建立されました。歴史的建造物では、日本で唯一「チーク材」という木材が使われています。

法堂

大雄寶殿の先にあります。法堂は説法を行う場所で、寛文2年(1662年)に建立されました。見どころでもご紹介した、円窓や卍くずしの勾欄が見られます。

西方丈

法堂に向かって左側にあります。寛文元年(1661年)に建立されたもので、この西方丈が萬福寺最初の建物だと言われています。ただし、こちらに入ることはできません。

東方丈

法堂に向かって右側にあります。西方丈が建てられた後の寛文3年(1663年)に建立されました。西方丈と同様、こちらに入ることはできません(プレミアム拝観なら可能とのこと)。

蛇腹(じゃばら)天井

大雄寶殿や法堂、開山堂では「蛇腹天井(黄檗天井)」と呼ばれる丸みのある天井になっているのが特徴です。「蛇腹」と付いていますが、龍の腹を表しているそうです。

回廊

萬福寺の建物はすべて写真のような回廊で結ばれています。これにより、萬福寺では天候が悪い時でも法要や儀式が執り行えるようになっているそうです。

石條(せきじょう)

境内の参道では写真のように石板が菱形になるように並べられています。萬福寺の境内が「龍の伽藍」と呼ばれていることにちなみ、龍の背の鱗をイメージしているそうです。

御朱印

萬福寺の御朱印は大雄寶殿の右側にある納経所で書いていただけます。複数種類ありますが、オーソドックスな「大雄寶殿」にしていただきました。「国宝」の文字が書かれています。

アクセスと拝観情報

萬福寺へは最寄駅(JR奈良線・京阪宇治線「黄檗駅」)から徒歩で行けます。

JR奈良線「黄檗」駅から徒歩で行く場合

駅出口の左前方に「京都芸術高等学校」の看板があるのでそちらに進んでいくと、その手前に細い路地があります。

その路地を進んでいき、突き当たりまで来たら左折します。

そうすると萬福寺の総門に着きます。

駅から萬福寺の総門まで徒歩約4分です。

京阪宇治線「黄檗」駅から徒歩で行く場合

改札口を出て東の方向(JRの踏切がある方)へ進んでいき、突き当たりまで来たら右折します。

そうすると萬福寺の総門に着きます。

駅から萬福寺の総門まで徒歩約4分です。

拝観時間【境内】
9:00~17:00
※受付は16:30まで

【朱印所・売店】
9:00~16:30
拝観料大人:500円
大学生・高校生:500円
中学生・小学生:300円

※団体割引あり(30名以上)
所在地京都府宇治市五ヶ庄三番割34
TEL0774-32-3900
ホームページhttps://www.obakusan.or.jp/
その他境内に有料駐車場有

ちょっとそこまで

萬福寺の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。

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お時間があればぜひ一緒に行ってみてください

三室戸寺

三室戸寺の最寄駅「三室戸駅 (京阪宇治線)」は、萬福寺の最寄駅の黄檗駅の1つ隣です。全国でも有数の「あじさい寺」と知られ、ツツジや紅葉の季節も人気があります。

平等院

平等院の最寄駅「宇治駅」は、萬福寺の最寄駅の黄檗駅の2つ隣です(JR・京阪どちらでも行けます)。10円玉でお馴染みの鳳凰堂があり、阿弥陀如来像は傑作と言われています。
平等院についてはこちらをご覧ください

萬福寺周辺地図

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以上、萬福寺についてでした!

こちらのページが拝観のご参考になりましたら幸いです^^

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