京都古寺【広隆寺】
広隆寺についてAbout Koryuji
広隆寺は聖徳太子ゆかりの「太子建立七大寺」の一つで、京都で一番歴史の古いお寺です。
まずは広隆寺の歴史について簡単に見ていきますね
真言宗系の単立寺院(特定の宗派に属していない寺院)。山号は「蜂岡山(はちおかざん)」。
創建については諸説ありますが、推古天皇11年(603年)に秦河勝(はたのかわかつ)が聖徳太子より仏像を賜り、その仏像を本尊とする寺院の建立を開始。推古天皇30年(622年)に完成したと伝わっています。
※創建当時は「蜂岡寺(はちおかでら)」といい、「広隆寺」と呼ばれるようになったのは平安時代以降です。
弘仁9年(818年)と久安6年(1150年)の火災で伽藍が焼失してしまいますが、いずれも藤原氏の援助で復興がなされました。
豊臣秀吉から600石の寺領を安堵されて以降、江戸時代も引き続き安堵されていましたが、明治期になると寺領の縮小や塔頭の廃寺が進み、現在に至っています。
広隆寺の見どころ5選Highlights
広隆寺の見どころを5つ厳選してご紹介いたします。
ぜひここに注目しながら拝観してみてください
貴き微笑みの像・弥勒菩薩半跏像
広隆寺と言ったらやはり国宝第1号となった『弥勒菩薩半跏像』ですね!冠をかぶっているようなので「宝冠(ほうかん)弥勒」とも呼ばれています。
※広隆寺創建のきっかけとなった「聖徳太子から賜った像」はこちらだったと伝わっていますが、定かではありません
華奢な体形、そしてわずかに笑みを浮かべた様(アルカイックスマイル)に思わずキュンっとするはず(私はなりました笑)!宝冠弥勒の前には畳敷きのベンチがあるので、そちらでゆっくり座ってご覧いただけますよ。
ちなみに、こちらの宝冠弥勒の隣にはもう1体の弥勒菩薩像があり、そちらは「宝髻(ほうけい)弥勒」と呼ばれています。宝髻弥勒は「泣き弥勒」とも呼ばれていて、確かに泣きべそをかいているような口元です。宝冠弥勒と対比しながら見てみると楽しいですよ。
仏像好きさんも納得!新霊宝殿
弥勒菩薩半跏像は広隆寺境内の一番奥にある「新霊宝殿(写真)」でご覧いただけるのですが、新霊宝殿は弥勒菩薩だけではありません。
新霊宝殿の入口と出口を取り囲むように「コ」の字になって仏像がずらっと50体ほど配置されていて、その様には圧倒されてしまいます。また、コの字の向かい側には千手観音・十一面千手観音・不空羂索観音菩薩の三像がいらっしゃいます。
個人的に弥勒菩薩の他に気になったものと言えば『十二神将立像』。木造の十二神将立像では最古の例で、こちらも国宝に指定されています。
京都のお寺は割と庭園や山門(三門)、天井画などがメインであまり仏像がフィーチャーされませんが、仏像好きさんには絶対おすすめできるところです!
広隆寺の本当のメイン・上宮王院太子殿
広隆寺といえば弥勒菩薩像ですが、本当のメインは本堂である「上宮王院太子殿(写真)」だと思います。享保15年(1730年)に建立されたもので、重厚感ある建物になっています。中に入ることはできませんが、靴を脱いで上がり、中を覗くことはできるようになっています。
こちらの御本尊は聖徳太子像(33歳像)で、天皇が即位時に着用される黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)をこの聖徳太子像へ贈られる慣習が第105代・後奈良天皇から続いています(すべての天皇ではありません)。
※直近では125代天皇(現上皇陛下)もお贈りされています
残念ながら秘仏のため外から覗いても見ることはできませんが、毎年11月22日のみ黄櫨染御袍を着用した聖徳太子像が公開されます。その日に合わせて参拝されるのもお勧めします。
※ちなみに、同じ日に新霊宝殿の秘仏である薬師如来像も公開されます
想像を超えた!お地蔵さん
広隆寺の楼門をくぐって左側には3つのお堂が並んであるのですが、一番奥には「地蔵堂」というお堂があります(写真)。
「あぁ、お地蔵さんが祀ってあるんだなぁ」とお堂前の小さな隙間からなんとなく覗いてみると、そこには想像を遥かに超えたドデカイお地蔵さんがいらっしゃいました笑
こちらのお地蔵さんは「腹帯地蔵」と言われ、弘法大師が安産や子孫繁栄を願って造られたとか。「腹帯地蔵」の名の通り、衣の間からお腹のところだけ腹帯のようなものを巻いているのが見えます。
お地蔵さんといったら小さいかわいらしいものだという先入観があったので、私は思わず「デカっ」と声が出てしまいましたが、皆さんはあまり大きな声を出してお地蔵さんを驚かせないようにしてください笑
広隆寺は諸芸上達の御利益あり?
日本の伝統芸能の1つである「能」と言ったら、観阿弥や世阿弥という人物が思い浮かぶと思いますが、能の起源は広隆寺の創建者・秦河勝だそうです。
その真偽は実際のところわかっていませんが、世阿弥が記した「風姿花伝」にそのように書かれているそうです。なんでも、秦河勝が「六十六番の物まね」を創作して聖徳太子の前で舞ったとか。
そういう言い伝えがあるからか、広隆寺には地蔵堂の左隣に「能楽堂」というお堂があります(写真)。
※こちらは大正時代にほかのところにあったものを移築されたそうですが、残念ながら現在は板が張っており、中を見ることはできません。
ひょっとすると、広隆寺は諸芸上達のご利益があるかもしれませんね。
京都三大奇祭・牛祭
広隆寺では千年以上前から始まった「牛祭(うしまつり)」という伝統的な厄除けのお祭りがあります。白いお面をかぶった摩多羅神(まだらしん)が牛にまたがり鬼とともに練り歩くというもので、その異様な姿から「京都三大奇祭」の1つとなっているそうです。
牛祭を始めるようになったきっかけは、天台宗の僧・恵心僧都(えしんそうず)が「広隆寺絵堂の尊像を拝みなさい」という夢のお告げがあったというもので、その「広隆寺絵堂の尊像」というのが現在の講堂(写真)にある阿弥陀如来像だそうです。
牛祭は10月12日に不定期で行われていましたが、現在は牛祭で使う牛の調達が困難だという理由から、ここ数年は開催されておらず、再開の目途もたっていないようです。ぜひ再開していただき、その奇祭を生で観てみたいものです。
ぐるっと広隆寺Around Koryuji
広隆寺の境内で見どころ以外で気になったものをご紹介します。
境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は30分くらいです
楼門(南大門)
広隆寺の正門になっています。元禄15年(1702年)に建立されたと伝わっており、門の中には仁王像が安置されています。
薬師堂
楼門を入ってすぐ左側にあるお堂です。薬師如来立像のほか、阿弥陀三尊立像や不動明王、弘法大師、理源(りげん)大師、道昌(どうしょう)僧都を祀っています。
太秦殿
本堂である上宮王院太子殿の斜め前にあります。太秦明神(秦河勝)のほか、漢織女(あやはとりめ)と呉秦女(くれはとりめ)を祀っています。
旧霊宝殿
1922年(大正11年)に聖徳太子1300年忌にあわせて建設されました。昭和57年(1982年)に現在の霊宝殿ができるまではこちらで仏像を拝観していましたが、現在は公開されていません。
アクセスと拝観情報Access & Information
広隆寺へは最寄駅(嵐電「太秦広隆寺」駅かJR「太秦」駅)から、あるいは最寄りのバス停から徒歩で行けます。
嵐電「太秦広隆寺」駅から行く場合
駅の前にある三条通を西へ進むと広隆寺の楼門があります。
※駅から楼門が見えるのですぐわかると思います
太秦広隆寺駅から楼門まで徒歩約1分です。
JR嵯峨野線「太秦」駅から行く場合
駅から東に向かって歩き、突き当りまで来たら右へ曲がります。
そのまま進んでいくと三条通まで出てきますので、そこを左へ曲がります。
しばらく歩くと広隆寺の楼門が見えます。
太秦駅から楼門まで徒歩約11分です。
最寄りのバス停から行く場合
広隆寺の最寄りのバス停は「太秦広隆寺前」です。
※停車するバスの系統は市バス「11」系統と京都バスです
バス停がある三条通を東へ進んでいくと広隆寺の楼門が見えます。
バス停から楼門まで徒歩約1分です。
主要バス停(駅)からの乗車時間は下記の通りです。
- 「京都駅前 (各線「京都」駅)」から
⇒京都バス:乗車時間約34分 - 「四条大宮 (阪急「大宮」駅 / 京福「四条大宮」駅)」から
⇒市バスか京都バスでも行けますが、嵐電で「太秦広隆寺」駅まで行った方が早いです - 「四条河原町 (阪急「河原町」駅)」から
⇒市バス・京都バス:乗車時間約33~41分 - 「三条京阪前 (京阪「三条」駅)」から
⇒市バス・京都バス:乗車時間約34~41分
乗車時間は目安です。交通状況等により大幅に変わることがありますのでご了承ください。
拝観時間 | 9:00~17:00(3月~11月) 9:00~16:30(12月~2月) |
拝観料 | 【境内】 無料 【新霊宝殿】 大人:800円 高校生:500円 中学生以下:400円 |
所在地 | 京都市右京区太秦蜂岡町32 |
TEL | 075-861-1461 |
ホームページ | なし |
その他 | 境内に駐車場有 (参拝者無料) |
ちょっとそこまでNeighborhood
広隆寺の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。
お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
東映太秦映画村
北西に向かって徒歩約6分のところにあります。時代劇のセットが見られるテーマパークです。場合によっては近くで撮影現場を見ることができます。お化け屋敷やからくり忍者屋敷などもあります。
妙心寺
北東に向かって徒歩22分ほどで行けます。JRだと太秦駅の1つ隣の「花園」駅が最寄り駅です。花園天皇により創建された臨済宗妙心寺派大本山のお寺です。「日本最大の禅寺」と言われています。
⇒妙心寺についてはこちらをご覧ください
広隆寺周辺地図
関連記事Related articles
広隆寺と同じく「太子建立七大寺」の1つになっているお寺です。世界最古の木造建築である金堂や五重塔、その他素晴らしい仏像を見ることができます。
こちらも同じく「太子建立七大寺」の1つになっているお寺です。広隆寺の弥勒菩薩像とよく比較される『菩薩半跏像』をご覧いただけます。
こちらも同じく「太子建立七大寺」の1つになっているお寺です。こちらでは日本最古の『三重塔』をご覧いただけます。