京都古寺【三千院】
三千院についてAbout Sanzenin
三千院は懐かしい里山の風景がいまだ残る大原にあり、自然が身近に感じられるお寺です。
まずは三千院の歴史について簡単に見ていきますね
天台宗。山号は魚山(ぎょざん)。「三千院門跡」とも呼ばれています。
延暦7年(788年)に最澄が比叡山東塔に建てたお堂が始まり。そのお堂は後に、最澄自作の薬師如来像を本尊とする「円融房」となりました。
大治5年(1130年)には堀河天皇の子・最雲法親王が住職となり、その後大原に円融房の政所(代官所)が置かれました。
応仁・文明の乱後に大原に本坊を移しましたが、徳川綱吉から京都御所近くの土地(現在の上京区梶井町あたり)の寄進を受けたためそちらへ移動し、大原は修行場となりました。
明治期になると当時の門跡(住職)であった昌仁法親王が還俗された(僧侶でなくなった)のをきっかけに再度大原に移り、明治4年(1871年)に「三千院」と称するようになりました。
三千院の見どころ5選Highlights
三千院の見どころを5つ厳選してご紹介いたします。
ぜひここに注目しながら拝観してみてください
ファーストインパクトは十分!聚碧園
三千院の拝観受付を済ませ、玄関を上がってそのまま進んでいくと客殿に入り、その客殿を囲むような形で「聚碧園(しゅうへきえん)」という美しい庭園があります(写真)。
こちらの聚碧園は江戸時代の茶人・金森宗和(かなもりそうわ)により修復されたものと伝わっていて、写真は南側を撮ったものですが、東側はやや小高くなっていて立体的なお庭になっているのが特徴です。
新緑や紅葉など四季折々を感じることができますので、お座敷でゆっくりご覧くださいませ。
ちなみに、こちらでは別料金でお抹茶をいただくことができ、お抹茶をいただく場合のみ縁側(朱色の敷物のところ)に座って庭園をご覧いただけます。より近くで庭園を眺めたいという方はぜひ!
気持ちの表れ?阿弥陀三尊像
客殿を進むと宸殿へ、そして宸殿から外に出ます。そこで見えてくるのが三千院の本堂である「往生極楽院」(写真)。
こちらのご本尊は阿弥陀如来様で、中央にドシンと座っておられます。お堂の大きさに比べややお体が大きめなので、なんとなく窮屈そう笑
阿弥陀如来様の左右には観音菩薩様(右)と勢至菩薩様(左)がいらっしゃるのですが、どちらも正座してやや前かがみ(大和坐り)になっているのが特徴です。一説には早く人々を救いたいという前のめりな気持ちの表れだとか。
ちなみに、往生極楽院の内部は極彩色で装飾されていたそうですが、残念ながら経年によりほとんど色味がなくなっています。拝観出口付近にある「円融蔵」というところで再現したものをご覧いただけます。
苔むす庭にお地蔵さん
往生極楽院の周りは、聚碧園にも負けない「有清園(ゆうせいえん)」という池泉回遊式庭園になっています。杉木立に苔むす庭…この景色を見た作家・井上靖先生が「東洋の宝石箱やあ~」と絶賛した(?)のもうなずけます。
有清園を回りながら、うっとりとモコモコの苔を眺めていると、小さなお地蔵さんがいらっしゃいました(写真)。こちらは「わらべ地蔵」というそうで、愛くるしい表情が印象的です。写真のものだけでなく、他にも種類があるのでぜひ探してみてください。
ちなみに、拝観順路を進んでいくと、川に沿って「おさな六地蔵」という別の小さなお地蔵さんもいらっしゃいます。おさな六地蔵もそれぞれユニークな表情をされているので思わず写真を撮りたくなるはず!ぜひこちらも合わせてご覧ください。
歌にもなった池は?
「京都~大原 三千院~♪」で始まる『女ひとり』という曲をご存じの方は多いのではないでしょうか?この曲をきっかけに三千院の観光客が増えたとも言われているそうで、参道には歌碑もあります。
歌詞の内容をざっくり説明すると、恋に疲れた女性が一人で三千院に来て、その方の着物の帯が池の水面に映っている、というような感じです。この歌詞に出てくる池が三千院のどこの池なのかはっきりとわかりませんが、おそらくここではないかというのが有清園(往生極楽院近く)にある「弁天池(写真)」。
※わらべ地蔵も弁天池の近くにあります
ちなみに、客殿前の聚碧園にも池がありますが、こちらは観賞用でそんなに近づくことができず、帯は映らんだろうと個人的に感じましたので、やっぱり弁天池のはず笑
紅く鮮やかに…三千院の紅葉
三千院と言えば紅葉の時期が特におすすめです。参道からすでに紅く色づいていますし、聚碧園や有清園の紅葉も鮮やかになっています。
緑の苔のじゅうたんと、その上に落ちる紅い葉っぱの対比もいい感じですよ!緑と赤は補色関係になっているので、どちらも映えて見えます(写真)。
ちなみに、大原は「日本紅葉の名所100選」にも選ばれていて、三千院のみならず、周辺にある実光院や宝泉院、寂光院などでも紅葉がご覧いただけます。
大原の紅葉は例年11月中旬~11月下旬頃が見頃だそうですが、三千院では10月下旬から1か月程度「三千院もみじ祭」が開催されます。ぜひその時期に合わせて大原にお越しくださいませ!
日本音楽の源流・大原
大原は「声明(しょうみょう)発祥の地」といわれています。「声明」というのは独特の節回しで読むお経のことです。
大原での声明の歴史は、まずは最澄の直弟子・円仁大師が大原を声明の根本道場として定め、後に良忍上人が大原声明を完成させました。
※写真は三千院から徒歩15分ほどのところにある「音無の瀧」というところで、良忍大師がこの瀧に向かって声明を唱えられていたとか。
声明は謡曲や浄瑠璃、長唄、民謡、演歌等の起源とも言われているので、ある意味大原は「日本音楽の源流の地」とも言えますね。
ちなみに、円仁大師がこの大原を声明の道場として定めた理由は、自分が声明を学んだ中国の「太源(タイユアン)」に地形が似ていたからで、地名の大原も「太源」からとられていると言われています。
ぐるっと三千院Around Sanzenin
三千院の境内で見どころ以外で気になったものをご紹介します。
境内をゆっくり一回りした場合の所要時間は40分くらいです
御殿門
三千院の玄関門です。石垣に囲まれ、城門のようになっているのが特徴です。石組みは、高い石積み技術で名高い穴太(あのう)衆により積まれたそうです。
宸殿
三千院の本堂で、大正15年(1926年)に建てられました。こちらの御本尊は最澄作と伝わる薬師瑠璃光如来で、残念ながら秘仏となっているため見られません。
朱雀門
往生極楽院の南側にあり、元は往生極楽院の正門でした。東福寺の月下門を参考に、江戸時代に再建されました。ただし、ここから出入りすることはできません。
弁財天
有清園から石段を上がっていくとあります。正式には「妙音福寿大弁財天」といい、京の七福神の一つになっています。ちなみに、「京の七福神」に似た「都七福神」もあります。
金色不動堂
弁財天の先にあります。平成元年(1989年)に建立され、護摩祈祷が行われています。御本尊は金色不動明王で、毎年4月のみ公開されます。こちらで御朱印がいただけます。
観音堂
金色不動堂の東側にあります。平成10年(1998年)に建立され、御本尊は3mに及ぶ金色の観音菩薩立像です。観音堂の隣には補陀洛浄土を模したという「二十五菩薩慈眼の庭」があります。
おさな六地蔵
観音堂から下っていくと律川沿いに並んでいるユニークなお地蔵さんです。「六地蔵」なので6体だと思いましたが、6体以上いました…六地蔵の「六」は六道の六だそうです。
阿弥陀石仏
おさな六地蔵の近くにあります。鎌倉時代のもので、高さが2.25mある大きな阿弥陀如来の石仏です。「売炭翁(ばいたんおきな)石仏」とも呼ばれているそうです。
円融蔵(えんにゅうぞう)
拝観出口の近くにあります。平成18年(2008年)に開館した重要文化財収蔵施設です。見どころでも紹介した、往生極楽院の内部を再現したものがご覧いただけます。
あじさい苑
三千院には「あじさい苑」というところがあり、例年6月初旬から7月初旬まで「あじさいまつり」が開催されます。約1000株のあじさいが見られます。
『女ひとり』歌碑
見どころでもご紹介した、デューク・エイセスの『女ひとり』歌碑です。三千院の参道にあります。以前ブラタモリでも紹介され、その時の写真もありました。
御朱印
三千院の御朱印は円融蔵の隣にある売店で書いていただけます。複数種類ありますが、私は「本尊薬師如来」にしていただきました。
アクセスと拝観情報Access & Information
三千院へは最寄りのバス停から徒歩で行くのがおすすめです。
最寄りのバス停から徒歩で行く場合
三千院の最寄りのバス停は「大原」です。
※運航は京都バスのみです
バス停案内所の先に横断歩道がありますので、そちらを渡りそのまま突き当りまで行って左へ曲がります。
そのまま道なりに進んでいくと「三千院門跡」と書かれた石柱がありますので、その石柱がある石段を進んでいくと「御殿門」前まで来ます。
バス停から「御殿門」まで徒歩約11分です。
主要バス停(駅)からの乗車時間は下記の通りです。
- 「京都駅前 (各線「京都」駅)」から
⇒乗車時間約76分 - 「国際会館前 (地下鉄烏丸線「国際会館駅」駅)」から
⇒乗車時間約22分 - 「出町柳駅前 (京阪本線・叡山電鉄「出町柳駅」駅)」から
⇒乗車時間約33分 - 「三条京阪前 (京阪「三条」駅)」から
⇒乗車時間約42分 - 「四条河原町 (阪急「河原町」駅)」から
⇒乗車時間約50分
乗車時間は目安です。交通状況等により大幅に変わることがありますのでご了承ください。
拝観時間 | 9:00~17:00(3月~10月) 8:30~17:00(11月) 9:00~16:30(12月~2月) |
拝観料 | 大人:700円 中学生・高校生:400円 小学生:150円 ※団体割引あり(30名以上) |
所在地 | 京都市左京区大原来迎院町540 |
TEL | 075-744-2531 |
ホームページ | http://www.sanzenin.or.jp/ |
その他 | 近隣に有料駐車場有 |
ちょっとそこまでNeighborhood
三千院の周辺にある観光スポットやおすすめのスポットをご紹介します。
お時間があればぜひ一緒に行ってみてください
来迎院
三千院から東へ徒歩7分ほどのところにあります。大原声明を完成させたと言われる良忍上人が天仁2年(1109)年に創建したお寺です。全盛期には49もの寺坊があったと言われています。過去には「魚山(ぎょざん)大原寺(だいげんじ)」というお寺の1つでした。こちらで声明CDが購入できます。
勝林院
御殿門から北へ徒歩2分ほどのところにあります。天台声明の基礎を作った円仁が承和2年(835年)に創建したと伝わり、その後寂源が復興しました。こちらも来迎院と同様、過去には「魚山大原寺」の1つでした。本堂では声明のサンプル音声を聴くことができます。
実光院
御殿門から北へ徒歩1分ほどのところにあります。勝林院の塔頭です。地泉鑑賞式の庭園と池泉回遊式の庭園があり、お庭を見ながらお抹茶がいただけます。境内には秋から春にかけて咲く、珍しい不断桜(ふだんざくら)がご覧いただけます。
宝泉院
御殿門から北へ徒歩3分ほどのところにあります。こちらも勝林院の塔頭です。柱と柱の空間を額に見たてた「額縁の庭園」や、伏見城で自刃した者の血が付いている「血天井」で有名です。拝観料にお抹茶代が含まれていますので、ゆっくりご覧いただけます。
大原陵(おおはらのみささぎ)
御殿門から北へ徒歩2分ほどのところにあります。承久の乱に敗れ、配流となった後鳥羽天皇と子・順徳天皇の御陵です。後鳥羽天皇は隠岐の島、順徳天皇は佐渡島に流され、それぞれの地で火葬されましたが、大正8年(1919年)にこちらで一緒に祀られることとなりました。
寂光院
御殿門からだと西へ徒歩約25分、バス停からだと西へ徒歩17分ほどのところにあります。聖徳太子が父・用明天皇の菩提を弔うために創建したと伝わり、壇ノ浦の戦いで亡くなった安徳天皇の母・建礼門院が子の菩提を弔ったと言われています。こちらでも紅葉が見られます。
三千院周辺地図
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三千院と同様、「天台宗五ケ室門跡」の一つです。「小さな桂離宮」と言われ、約150年ぶりに宸殿が再建されました。紅葉の名所にもなっています。
三十三間堂を管理する妙法院も「天台宗五ケ室門跡」の一つです。三十三間堂と言えば長いお堂と、1001体の千手観音像でお馴染みです。
『女ひとり』の1番は三千院を歌ったものですが、2番は高山寺です。日本で初めてお茶が本格的に栽培されたところで、鳥獣戯画や石水院でも有名です。